FIP(猫伝染性腹膜炎)ウェットタイプの治療が奏功し寛解した仔猫

FIP(猫伝染性腹膜炎)はコロナウイルスが突然変異したFIPウイルスにより、胸水、腹水、肉芽腫、ブドウ膜炎、神経症状などを起こす疾患です。二峰性の発熱、食欲不振、高γグロブリン血症を起こします。

以前は治療薬が高価だったり、入手が極めて困難であったため、当院での治療は難しく、治療を断念せざるを得ませんでした。他の病院に転院してもらう場合もありました。

サイベリアンの8カ月の男の仔 現在では入手経路が発展し、信頼のおける販売元から入手できるようになり、治療薬の種類も増えてFIPの治療が可能になった病院も増えています。当院でもFIPの治療薬の入手が可能になりFIPの治療薬や治療法の準備を済ますことができました。

そんな中、本年1月、サイベリアンの8カ月の男の仔が、腹部膨満で来院しました。血液検査でFIPの仮診断を行って、治療開始。後日、腹水のウイルス検査でFIPの確定診断を行いました。

治療により元気が回復、食欲も戻り、大きかったお腹の膨らみは徐々に小さくなり、少しずつ筋肉がついたせいで猫らしい引き締まったお腹になっていきました。

(治療開始時)

(治療開始時)

(治療2か月目)

(治療2か月目)

そして、84日間の投薬を終了。寛解と判断しました。その後数カ月たちましたが、再発は認められず、元気に過ごしています。本当に良かったです。

以前は治療法も確立されておらず、救うことができなかったFIPが、治療薬が開発されて治療できるようになり、更に入手困難な状況で大変高額であっても、止むなく使用しなければならなかった時代から、安全が証明された薬品が、安定して流通する時代になってきました。また、各薬品の効果や使用法も解明され、FIP治療の方法や考え方も、日々革新されています。

こういう日進月歩を目の当りにすると、感慨深いものがあります。獣医師になりたての頃に診たFIPの仔。どうしようもありませんが、悔しい気持ちでいっぱいでした。気持ちを改め、FIPの診断法、治療薬や治療方法、症状や合併症の判断と治療を慎重に判断し安全に対処できるよう、今後も精進してまいりたいと思います。